2009年面白かった漫画

あーえーうー


実は腰を据えてじっくり考えてはいませんが、書きながら決めるのもよかろうと思います。
というわけで、このマンガとかもすごい!2010いきます



1位 西遊妖猿伝 西域篇 / 諸星大二郎  講談社

西遊妖猿伝 西域篇(1) (モーニング KC)

西遊妖猿伝 西域篇(1) (モーニング KC)

なんか結局これで面白味なくてすいません。
長い間(実に11年間)の休載を経て昨年からモーニング本誌で連載開始。
と同時に第一部「大唐篇」第二部「河西回廊篇」となっていたものを全て第一部「大唐篇」としてまとめた新装版が講談社より月2冊刊行(全10巻)
これを経て本年、ようやく当作品の最新刊が出版される運びとなったわけです。

ぼくの生まれる前からやっている作品がいま現在のぼくのムーヴメントとして合流するこの感覚がなんとも不思議です。


話はざっくり言えばもちろん西遊記
しかし、猿とか豚とかを連れ旅する三蔵法師の取教の旅、ではなく、本作は(一応)人間の悟空や猪八戒や、更にたくさんの登場人物が入り乱れての冒険活劇。
更にざっくり言ってしまえば、話の軸は孫悟空が「斉天大聖」という悲劇的な運命に抗うところにあり、つまりプロットだけ見ればありがちな少年漫画のひとつであるともいえるのです。


しかし本作の魅力はむしろそういった、小手先抜きの活劇にあるのではと思います。
多くの登場人物がそれぞれの目的を持って、しばしば三つ巴やそれ以上にまで多角化していく戦況は、次はいったいどんな展開になるのかとワクワクさせてくれるし、
主人公の孫悟空玄奘三蔵はいつも勇気と信念を持ってそれに立ち向かい、読者にカタルシスを与えてくれる。
こういうところにいかにもマンガ!という面白さがあると思います。読むのが楽しいです。


もちろんそうでない漫画の面白さもたくさんありますし、
更に言えば諸星先生はナンセンスなども多く描いているので、
もちろん色々な漫画があるからこそ漫画を読むのが面白いのだとは思いますが、
改めて「これが面白い」と宣言するときにはこうした漫画然とした漫画をどうしても挙げたくなります。


せっかくなので内容にももっと触れていきますと、
二十年以上も続いた大唐篇も、まだ起承転結の起が終わったばかりで、
西域篇・第一巻でようやく玄奘一行の旅はようやく本格的に始まったといえる段階にきました。
西域篇では火焔山での牛魔王との戦いがクライマックスとなる予定、ということがすでにインタビューで明かされています。
(今は亡きマンガのチカラのインタビューより)
未定のこととしてどこまでその通りになるかはわかりませんが、この辺りも楽しみにしていきたいですね。


長くなりすぎてしまった。1位で既に…
さてつぎ。

2位 ひまわりっ健一レジェンド〜 / 東村アキコ   講談社

ひまわりっ ~健一レジェンド~(12) (モーニング KC)

ひまわりっ ~健一レジェンド~(12) (モーニング KC)

2009年はやっぱりどうしても東村アキコの勢いがすごかった。
2008年も2007年もすごかった気がするけど、今年はすごいスピードだった。


コーラスにて『ママはテンパリスト』、
の2巻と同時にスピンオフ『テンパリストベイビーズ』も発売して、
それとKISSでは『海月姫』、
えーっとあとcookieで『きせかえユカちゃん』(は不定期)
それでいてどれも面白いしなんていうかもうコメントの仕様がない!


そしてそんな既に大人気の東村アキコを「いや今更…」の感を押し切って2位で押させていただきますのは、
ひとえにモーニング連載の『ひまわりっ』が実にいま正に連載終了を迎えんとしているからであります。
あと1話…っ!


本作は『きせかえ〜』で初連載となった作者がさらに少女漫画家→ギャグ漫画家という開花を成し遂げていく過程の中で生まれていくハイテンションがもうなんかエクスプロージョンなわけで、とにかく毎週毎週の展開がもう全然ちゃんと考えられてないんじゃないかというぐらい勢いで進んでいってそしてそれが毎週毎週なぜかおもしろいのでそんな本作が終わり更に来年から彼女がどのような作品を描いていくのかという感情でとにかくまあゴリ推しですね!
読みづらくてすいません!


いつも言っているのでまあもういいと思いますが『海月姫』も楽しみです!


さて、次…なんですが、
ここにきてすごく迷いました…考えるのにすごく時間がかかった。
3位以下挙げたい作品はいくつかあるんですが、東村アキコからの壁が厚いんですよ。
ので、以下同率3位が続く形でいきたいと思います!
一応ここに越えられない壁があると捉えて読んでいただけると助かります。

3位 猫背を伸ばして / 押切蓮介   Bbmfマガジン

猫背を伸ばして(GAコミックス)

猫背を伸ばして(GAコミックス)

2009年は『でろでろ』という代表的連載を完結させ、
話題になった『ミスミソウ』も同じく終了、
CONTINUE連載の『ピコピコ少年』そして本作とエッセイコミックの分野でも才能を発揮し、
他にもプピポー、ゆうやみ特攻隊など冷静に考えると多作の押切先生。
その中でも今回は『猫背を伸ばして』です。


これはもうなんというか読んでもらうしかない…
バイト先でいびられたりとかヤンキー怖い!とか体育教師怖い!とか自転車の防犯確認とか、
直接同じ経験をした訳でなくても、ある程度のノスタリジーとともに何故かなんらかの共感がうかんできます。
それは多分あの「なんか上手くいかない感じ」なのでしょう。あのクラスとかで上手くいかない感じ…。

3位 ぎんぎつね / 落合さより   集英社

ぎんぎつね 1 (ヤングジャンプコミックス)

ぎんぎつね 1 (ヤングジャンプコミックス)

新人枠。
ウルトラジャンプ掲載。元は読み切りだったものがやがて連載に。


神様の類を見ることができる、神社の娘まこと。
その神社の神使(かみつかい)である狐の銀太郎。
それと若干の仲間たちが織り成すほのぼの的日常の物語。
わかりやすくかつ嫌な言い方で言えばよくある人情ストーリーですね。


説教くさくならない、押しつけがましくないメッセージ性もちょうどよい心地だし、
キャラクターもよく動きまわって活き活きとしていて、現実的というよりは具合良く漫画的な魅力があります。
絵も背景白かったり、物を詰め込みすぎてたりするときもありますが、質感あって(毛とか)うまいです。

3位 いばら・ら・ららばい / 雁須磨子   講談社

いばら・ら・ららばい (KCデラックス) (KCデラックス Kiss)

いばら・ら・ららばい (KCデラックス) (KCデラックス Kiss)

これを読んで雁須磨子の面白さが初めて分かりました。


「女子力」とそれを描く女子たちの漫画については以前ちょちょいと書きましたが、
要するに、「かわいい」と人から言われるような(思われるような)能力、それが女子力というものを説明するひとつなのかなと思ってます。
『いばら・ら・ららばい』はもう学生ではない女性たち数人を主人公にとるオムニバス形式の物語です。
どの女性も「かわいい」という概念との距離感はそれぞれ別々ですが、
それぞれがそれに納得したり納得できなかったりしても、
結局のところはその距離感はそれぞれの事情に根付いたものであるし、それでやっていくしかないわけで、
それはもう「かわいい」という概念に限らず、対人関係やっていく上で結構はっとする部分だったりします。
特に今はもう流行らんかもですがモテ/非モテのあのせめぎあいにも当てはまる議論だと思うのです。

6位 ストロボライト / 青山景   太田出版

ストロボライト

ストロボライト

太田出版枠。いやウソ。
以前の『SWWEEET』から一体何年が…と思って調べたら、あれが2005年なので実に4年ぶりの復活になります。
本作とほぼ同時にスペリオールの『チャイナガール』も出版されましたが、こちらは微妙。


これも発売時に割とちゃんと感想かいた方ですが、
とりあえず、ここ数年よく見られる童貞的・モラトリアム的な鬱屈した感情を描くアレのひとつではあっても、
単なるソレではない、というところがポイントです。
「語る」―「語られる」という行為によって成立する物語を作中作と独白の混合によって生み出していく、
挑戦的なテーマが本作の見どころではないかと思います。たぶん。

7位 プリーズ、ジーヴス / 勝田文   白泉社

プリーズ、ジーヴス 1 (花とゆめCOMICSスペシャル)

プリーズ、ジーヴス 1 (花とゆめCOMICSスペシャル)

少女漫画枠。一応。
やわらかい絵と台詞回し、そして多くの女性たちのツボをつくであろうイケメンで定評のある(多分)勝田文
こちらも東村アキコや押切連介と同じく、今年の勢いということで注目したいです。
白泉社からは『プリーズ、ジーヴス』1巻、『あのこにもらった音楽 愛蔵版』
集英社から短編集『ウランバナ』と連載『ちくたくぼんぼん』の1巻で、元々寡作な作者には珍しく今年は4冊。


吸血鬼的色白学生がニクい昭和ロマンス『ちくたくぼんぼん』と迷いましたが、
現在のジャンルとしての執事にも遜色ない完璧男のジーヴスに思わず惚れてしまいそうになる本作でここは。
ちなみに原作は英国の人気小説シリーズで、金持ちのお気楽男と抜け目ない完璧従者によるコメディ。
ある種のこち亀みたいなもん…いや違うか。

8位 百物語(上之巻、下之巻) / 杉浦日向子   小池書院

百物語 上之巻

百物語 上之巻

百物語 下之巻

百物語 下之巻

これは再販枠?
そこそこ昔の作品ですが、恥ずかしながら今年初めて読んでとても感銘を受けたので。


極めて短い(大体が2P〜10Pほどの)怪談や奇談がひたすら描かれているものです。
怖い、恐い、という感情よりも、怪談本来の生理的な(ぬるっとした)気持ち悪さや、
しばしば怪談に含まれる妙な可笑しさが生々しく描かれており、非常に読み応えがあります。
すべて独立した短編ではありますが、そうした描写・表現方法は一貫されており、連続性すら感じる構成も素晴らしいです。
ホラーなどが好きな方にはぜひ読んで欲しい作品です。

9位 クロとマルコ / 堀骨砕三   秋田書店

クロとマルコ (ヤングチャンピオン烈コミックス)

クロとマルコ (ヤングチャンピオン烈コミックス)

堀骨砕三が一般誌にやってきた!
ヤングチャンピオン烈はたまに凄いのが載っていて驚くことがありますが、
今年はこれが凄かった。


何と申しましょう、一般誌ということもあり、もちろん(題材の割には)マトモなストーリー性のある話が多いのですが、
結局根底には変態感が拭い去れないところがよいと思いました。

10位 ONE PIECE / 尾田栄一郎   集英社

ONE PIECE 56 (ジャンプコミックス)

ONE PIECE 56 (ジャンプコミックス)

いやココにきてコレも違和感を感じますが…やはり面白かったので、少年漫画枠ですね。


マンネリ化せずに今年のワンピースはワクワクする展開だったと思います。
何よりも、今までの「どうせ最後にルフィがでかい声出して敵倒すんでしょ?」を覆して
負けまくるルフィが印象的だった…って、これは去年くらいからそうでしたっけ?
海賊団の仲間と一時離れたのも、同じ事しかやらないような戦闘シーンから脱却できて効果的、
昔のキャラが多く登場したのも長く続いている本作だからこそできる豪華感。
結局読者は「はやく仲間たち出てこないかなー」とも思うわけですが、
そんなんで仲間がバーン!で揃ったら盛り上がるに決まってるじゃん!というずるさにも期待してます。

総じて(ランク外なども)

ぼく自身が漫画を最新の発売日で追いかけるようになったのも去年半ば位からなので、
2009年は何が面白かったか、さて、と思い返してみると「あれ…何があったっけ?」の一辺倒だったりします。


印象に残っているものの一つの特徴としては、何か特定の作品というのもそうですが作者として勢いがあった人も目立つものです。
挙げさせていただいた中にも比類なき東村アキコを始め押切連介や勝田文など入っておりますし、
残念ながら入れられなかった中にも今日マチ子は『みかこさん』『ミドリさん』『100番めの羊』と珍しく早い刊行ペースをみせました。


各出版社も出版業界全体での盛り上がりを意識してか、近年は同作者の作品の同時発売モノが増えている気がします。
読者側でもやはりそうした作者や作品に対しては注目度が上がりますし、河内遥などはそうして注目が集まっている代表例ではないかと思います。
あとヤマシタトモコとかも。


雷句誠佐藤秀峰の版元移籍に続いて、中村珍と編集者との間のトラブルが話題になったり、西島大介の原稿紛失事件を描いた『魔法なんて信じない。でも君は信じる。』と、事件の当事者ならぬ当事本『影の子どもたち--世界の終わりの魔法使い3 』(河出書房新社)も発売され、
漫画家と編集者(と原稿)をめぐるニュースが多かったですよね。
コミックスとしては何万も印刷されたコピーのものが日本中の書店に並んでも、作者の手元にはオリジナルである原稿が無いというのも奇妙な話ですが、漫画というのはなぜそういう不思議な状況が生まれ得るメディアなのか、というのを考えてみるのも興味深いです。


面白いのだけど特に「今年」という視点ではないな、という漫画は、
ウルトラジャンプの『STEEL BALL RUN』
→とうとうラスボス突入で来年中に終わるかいや終わらないか!
Flowersの岩本ナオ町でうわさの天狗の子
→単行本派としてゆっくり追うことにしたのだけど新キャラどう絡むのかとても気になりますね
モーニングの『宇宙兄弟
→毎回ドキドキワクワク、というのがぼくの好みではありますが、これはそうでなくてもじっくり面白い。
あとは次点でヤングジャンプの『嘘喰い』とか、ダ・ヴィンチの『舞姫テレプシコーラ』も。


残念ながら他と比べてランキングに入れきれなかったものとしては
評判良好の花沢健吾アイアムアヒーロー』、いまのところぼくはまだ判断しかねるので保留したい。
こうの史代この世界の片隅に』この作者の作品をそこまで読んだわけではないけど、今までのではかなり面白かった。
とよ田みのる『友達100人できるかな』
など。

というか挙げていくときりがなさ過ぎて、
三宅乱丈『ユーレイ窓』
野村宗弘とろける鉄工所
入江亜季乱と灰色の世界』(Fellows枠)
阿仁谷ユイジ『DROPS』(太田出版枠の次点)
中原アヤ『ベリーダイナマイト』
衿沢世衣子『シンプルノットローファー』
熊倉隆数『もっけ』(終わった)
高橋葉介『夢幻紳士 回帰篇』
森田崇『ジキルとハイドと裁判員
………もう本当にきりが無いのでさすがにやめますが、色々挙げてるとやっぱりあれこれあったなあというのを感じます。


さてさて、以上で終わりです。長々とここまで読んでくれた方はお疲れ様です。誤字脱字あったらすいません。
来年も楽しんで漫画を読んで好き勝手にあれこれ言っていけたらなと思っていますので、よろしくお願いいたします。
では良いお年を!


(追伸:KISSで第七女子会彷徨のつばなが連載を始めました!注目だとおもいます!)

海月姫(1) (KC KISS)

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ちくたくぼんぼん 1 (クイーンズコミックス)

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みかこさん 1巻 (KCデラックス モーニング)

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STEEL BALL RUN vol.19―ジョジョの奇妙な冒険Part7 (19) (ジャンプコミックス)

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この世界の片隅に 下 (アクションコミックス)

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町でうわさの天狗の子 5 (フラワーコミックスアルファ)

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宇宙兄弟(8) (モーニング KC)

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友達100人できるかな(2) (アフタヌーンKC)

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